フォトアルバム
Powered by Six Apart
 

« 太郎と次郎と花子 2 ~転機~ | メイン | ミドリさんはデリケート »

太郎と次郎と花子 3 ~後悔~

包丁を握る花子と血まみれの太郎と次郎。

この状況になるまでのいきさつはというと・・・

太郎は久しぶりに予知夢を見た。
内容は次郎が殺されるというものだった。
犯人までは夢に出てこなかったが、とりあえず次郎が殺されるのを阻止するために太郎は次郎宅を訪れたのだった。

次郎宅へ着きチャイムを鳴らす。
家の中の電気はついているが出てこない。
「遅かったか・・・」
玄関の鍵は閉まっていたので太郎は庭に回り込み、落ちていた大きめの石で窓を叩きわった。

ものすごい大きな音がしたが構わず太郎は家の中に入り込んだ。
2階のほうから声が聞こえてきた。

「やめろ・・・花子・・・・」

太郎は急いで2階へと上がった。
そこには腹を刺され血を流している次郎と包丁を握っている花子がいた・・・。

「次郎ちゃん、あなたが死ねば財産は全部私のもの。保険金もおりるわ。愛する私のために死んでよ・・・」

狂気じみた表情を浮かべた花子は深手を負っている次郎に包丁を振りかざしていった。

「やめろ!!」

太郎は必死で二人の間に割って入った・・・。

「ううっ・・・」

包丁は太郎の左腕を切り裂いていた。

「太郎ちゃん?なんで太郎ちゃんがここにいるのよ・・・・」

「次郎が殺される夢を見たんだ・・・まさか花子が・・・・くそぉ!」

「邪魔しないでよ太郎ちゃん。勝負は私の勝ちよ。私が一番金持ちになるのよ!」

「は・・花子・・・・その為に僕と結婚した・・・の・・・か・・・・」

苦しそうに、悔しそうに次郎が言った。

「しゃべるな次郎!じっとしてろ!」

「もう手遅れよ!太郎ちゃんも殺してやるわ!」

襲いかかる花子。とっさに太郎は身をかわし花子の包丁を奪いとった。

パトカーのサイレンの音がしてきた。どうやらさっき窓を割った音に驚いた住民が通報したらしい。

「くっ、時間がない。許せ花子!」

「た・・太郎・・・や・め・・」

「キャーーー!!」

次郎の弱々しい叫びも届かず太郎の刃は花子を貫いた。

ガクッとうな垂れる花子・・・。

「なに・・よ・・・なん・・な・・のよ・・・。二人・・とも・・・だ・・いっ・・・き・・らい・・」

憎しみの表情を浮かべ花子は息絶えた。

「太郎・・・君を・・・まきこんじゃった・・・ね・・・ゴメン・・」

「大丈夫だ。俺たちはまだ終わったわけじゃない!また過去に戻ればいい!」

「そ・・そっか・・・・腕、痛いで・・・しょ?血が・・いっぱい・・・出てる・・・よ・・・」

「バカか。お前のほうが痛そうだぞ明らかに・・・・あのな、儀式には自分の血が必要なんだよ。刺されてちょうど良かったってもんよ」

「僕・・もう・・ダメみたい・・・・また・・・過去で・・会おう・・・・ね」

静かに次郎も息をひきとった。

「お前たちを誘ったばっかりに・・こんなことに・・・。今度は記憶ごと過去に戻るのは俺一人だけだ・・・・」

そして儀式を行った。

意識が薄れ、やがて戻った。


「えー、みなさんも無事成人の日を迎えることが出来たことを心より祝福いたします」

見覚えのあるオジサンがマイクで話している。

太郎は次郎と花子を見てみた。
退屈そうに、オジサンの話を聞いている。

「ま、いいとするか・・・・」

その後、太郎は次郎と同じ作戦を試みた。
もちろん太郎はヒット曲を量産する若き天才プロデューサーになった。

富と名声を手にいれた太郎に花子は急接近してきた。

花子はカフェに太郎を呼び出した。

「ねえ太郎ちゃん。私ね太郎ちゃんの事がずっと好きだったの。私じゃダメ?」

「花子、お前は次郎の事が好きじゃなかったのか?」

「え?次郎ちゃん?冗談でしょ。次郎ちゃんはただの友達だよ」

「・・・ごめん花子。俺もお前を友達としてしか見ることが出来ないんだ・・・それじゃ仕事があるからまた!」

そう断ると太郎は勘定をすませ足早に店を出た。

まだ僅かに花子を好きな気持ちも残っている・・・

そして次郎を刺した花子の本性・・・・

花子に切りつけられた痛み・・・

花子を刺したときの感触、悲鳴、憎しみの表情、あらゆる記憶がよみがえる。



「俺は何度過去に戻っても満足なんて出来ないんだ・・・・・」


過去に戻っても記憶までは消すことの出来ない太郎は唇を噛みしめ運命を呪った。

過去に戻ることで太郎が手に入れたものは富と名声と・・・・

後悔だった。

(おわり)

コメント

太郎ちゃん、幸せになってほしいですね。(T_T)

>ねこみちさん
昔、「過去に戻ったら何をしようかな~」と考えたときに妄想が膨らんで書いたものです。
太郎ちゃんの心理になって色々と考えてしまうとまた妄想が膨らんでしまうので、なるべく意識を向けないようにしています(笑)

コメントを投稿