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【心の旅(フィクション)】 永遠の幸せ

ひっそりとした森に迷い込みました。

やがて一人の男性と出会いました。

森の中に木で作ったテーブルとイスがありそこで男性は何かを書いていました。

「何を書いているんですか?」

「小説を書いているんです」

「へえ小説ですか。すごいですね」

「すごくなんかないんです。私の理想の世界を小説の中に書いてるだけなんです」

どうやら好きな人がいるらしくて、その人と結ばれ幸せになる話を書いているそうです。確かにその小説が完成すれば自分だけの幸せな世界が永遠のものとなるのかもしれないですね。そんな愛の向け方もあるんですね。

「あなたも自分の理想を小説に書くといいですよ。あなたの理想は何ですか?」

「僕の理想ですか・・・」

パッと言われ即答できませんでした。
ダラダラと生きてる証拠ですね。
もっと目標を持って自分の信じる幸せに向かって進むべきだと教えられました。

【心の旅(フィクション)】 闇と孤独へありがとう

暗い孤独という闇にまぎれこみこました

嫌な暑さの中、冷えたビールを飲み
暑さに感謝するように

嫌な寒さの中、こたつでみかんを食べ
寒さに感謝するように

嫌な孤独の中、いったい何が
孤独を感謝へ導くのでしょうか

一人闇の中、その時を待っていました
しかし、わからないまま闇から開放されました

そして開放されたから、わかったこと
永遠の闇、永遠の孤独なんてものはないのだということ
自分自身に闇や孤独から抜け出す許可を与えればいいのだということ

そして

闇があるから、光の美しさに感動するということ
孤独があるから、人の温かさに感動するということ

一人静かに、過ぎ去った闇と孤独へ感謝しました

ありがとう

【心の旅(フィクション)】 否定の渦

愛という感情を肯定する人と否定する人が話し合いをしている場面に遭遇しました。

ずっと見ているとその姿は愛について語っているのではなく「なんでお前は愛を信じるんだ」「どうして君は愛を信じないんだ」という相手を否定してるだけのように見えました。

そうして僕は無意識にその二人を否定してしまっていて、そんな僕を見た誰かがまた僕を否定して・・・そしてその人をまた否定する誰かが現れて・・・無限に続いていくんです。

無限に否定が続いていって嫌な世界だなって思ったんですけど、ずっと見ていると気づくものですね。

僕が人を否定しなければいいのだと。
それだけで世界を否定することもなく悩むこともなくなるのだと。

改めて最初の二人を見てみました。

自分の主張を熱く語る目を輝かした二人がそこにはいました。

僕を否定していた人を探してみましたが姿はもうありませんでした。

【心の旅(フィクション)】 血まみれの手でありがとう

幼い少女が薄暗い空き地にポツンと座りこんでいました。

「どうしたの?おうちに帰らなくていいの?」

僕は歩み寄り、そう話しかけながら少女を見てギョッとしました。

少女の手は血まみれだったのです。

「大丈夫?ケガでもしたの?」

「うん、平気よ。フクロウおばさんを待ってるだけだから」

「そっか・・・人を待ってるんだね。でも手を洗わなきゃ」

「もう5時を過ぎてしまったからフクロウおばさんが来るまで一歩も動きたくないの」

いまいち事情が飲み込めなかったのですが、少女が大丈夫と言うので僕はその場を去ろうとしました。

「・・・待って・・・おじさん・・・」

遠慮がちに少女は僕を呼びとめました。

「どうしたの?」

「ひとつだけお願いがあるの」

「うん。なにかな?」

「あっちの道路でお犬さんが死んでいるの。おじさん埋めてあげて・・・」

「そっか、わかった。おじさんが埋めてあげるよ」

「ありがとう」

少女の言った道路に出ると子犬が血を流して死んでいました。きっと車にでもはねられたのでしょう。再度ひかれないように道の横のほうに寝かされていました。あの子の手が血まみれだったのはこの犬を道の横に運んだからなのだと気づきました。

死というものにまだ慣れていない少女が無残な犬の亡骸を見てどう思ったのか考えると胸が痛くなりました。

ようやく子犬を埋め終わると時間は6時になっていました。ふと少女のほうを見るとまだ少女は座っていました。少女はこちらを見ていて、その瞳は悲しい光を放ちながらも微かに笑っているようでした。

少女の口が動きました。ありがとうと言っているのだと声は聞こえませんでしたがわかりました。

「ありがとう」

いきなり耳元で声がして僕は驚きました。

声の主は50歳くらいのおばさんでした。この人がフクロウおばさんなのでしょうか。

いろいろと聞きたいこともあったのですが関わらないことにしました。

僕の手が少女と同じように血に染まっていて、それだけで何かわかりあえたような気持ちを感じて僕は満足していました。

なぜか僕もつぶやいていました。

「ありがとう」